交通事故の加害者に逸失利益を請求する流れ
■逸失利益とは?
逸失利益とは、交通事故がなければ将来得られたであろう利益のことをいいます。交通事故により被害者が亡くなったり、後遺症を負ったりして働けなくなった場合、被害者は将来の収入を失ったこととなりますから、その賠償を請求することができます。
■逸失利益請求の流れ
後遺障害による逸失利益を請求するには、まず、症状が固定されるのを待って後遺障害等級認定を受ける必要があります。次に、これをもとに損害額を計算して、示談交渉を開始します。そして、示談が成立しなければ民事調停や訴訟へと移行します。
〇後遺障害認定
後遺障害認定には、事前認定と被害者請求という2種類の申請方法があります。
事前認定は、相手方の保険会社が必要書類を準備して申請する方法です。被害者は医師から後遺障害診断書を受け取り、相手方の保険会社に送付します。これが完了すると相手方の保険会社は必要書類を取得して、損害保険率算出機構に対して送付します。機構による結果通知は相手方保険会社を通して被害者に届き、手続が完了します。
被害者請求は、被害者が必要書類を準備して申請する方法です。この方法では、被害者が診断書・明細書・検査画像等の必要書類を取得して、自賠責保険会社に送付します。これを受領した自賠責保険会社は機構に対して書類を送付し、結果通知は自賠責保険会社を通じて被害者に届き、最後に被害者に自賠責保険金が振り込まれます。
事前認定の方が被害者の行う手続きが少なく楽ですが、被害者請求では自賠責に基づく賠償金を迅速に受け取れるというメリットがあります。後遺障害の審査には30日~40日かかることが多く、場合によっては4カ月程度かかることもあります。
〇損害額の計算
逸失利益の具体的な金額は、以下の計算式によって算定されます。
逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×ライプニッツ係数
基礎収入とは、被害者が将来得たと見込まれる収入のことをいいます。被害者が既に働いていた場合は、会社員であれば前年の収入が、自営業であれば前年の確定申告に記載された所得額が基礎収入となります。これに対し、学生や新卒社員、専業主婦、無職の場合には、賃金センサスと呼ばれる統計資料を用いて基礎収入が計算されます。
労働能力喪失率とは労働能力が低下した割合のことをいい、認定された後遺障害等級が重要な考慮要素となります。
ライプニッツ係数とは、中間利息控除を踏まえた割合のことをいいます。例えば交通事故で20年分の将来収入が失われたとして、これを一括で受け取ってしまうと、本来であれば20年かけて取得したはずの金銭を無利息で前借りできてしまうことになります。そのため、逸失利益の総額から中間利息を控除した金額が、現在受け取ることのできる金額となります。
〇示談
逸失利益の金額が算定できたら、相手方との示談交渉を行います。示談では主に損害賠償額が争点となり、合意が成立すれば賠償が行われ、手続きは終了となります。示談が決裂となった場合には、民事調停や民事訴訟といった裁判所での手続きが必要になります。