土地・建物に特化した財産管理制度の創設
令和4年1月28日、「民法等の一部を改正する法律」が制定され、土地建物に特化した財産管理制度が新たに創設されることとなりました。
なお、同制度は、令和5年4月1日から既に施行されています。
以下、土地建物に特化した管理制度の制定目的や、利用するための要件等について解説していきます。
土地建物に特化した財産管理制度の制定目的について
昨今、不動産登記を参照しても、所有者が直ちに判明しない土地や、所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない土地が増加しています。
これらの土地は、「所有者不明土地」と呼ばれ、公共事業や復旧・復興作業の執行の妨げとなっているほか、長い間放置されることにより、管理不全の状態となり、周辺住民の生活に悪影響を及ぼすおそれがあるため、長い間問題視されてきました。
以上のような状況を改善するために、所有者不明土地の管理を適切に行っていく制度として、土地建物に特化した財産管理制度が新設されることとなりました。
従来の財産管理制度との違い
令和4年1月28日改正前の民法においても、所有者以外の者が財産を管理する財産管理制度として、①不在者財産管理人②相続財産管理人③清算人といった制度が設けられていました。
もっとも、これらの制度は、対象となる人物の財産すべてを管理人が管理することを前提に置いており、いわば「人単位」で管理人を選任する制度であるということができます。
しかし、ある特定の人物の財産をすべて管理するにあたっては、財産関係の調査だけでも莫大な労力がかかるほか、継続的な管理を行っていくにあたっても、莫大な労力と費用が掛かり、従来の財産管理制度は、所有者不明土地の解消のために効率的な手段ということはできません。
また、従来の財産管理制度が「人単位」の財産管理を念頭に置いている以上、所有者不明土地のうち、戸籍を参照しても所有者が明らかにならない土地については、制度を利用すること自体ができません。
以上のような状況に鑑み、いわば「土地建物単位」の管理を行うことにより、所有者不明土地を効率的に解消してくために、土地建物に特化した財産管理制度が制定されました。
土地建物に特化した財産管理制度の開始要件
土地建物に特化した財産管理の開始は、①所有者不明土地②管理不全土地いずれについても、利害関係人が申立てを行うことにより開始されます。
ここにいう利害関係人とは、所有者不明土地あるいは管理不全土地の管理につき、利害関係を有する者をいい、具体的には、以下のような者が利害関係人として挙げられます。
①所有者不明の土地管理について利害関係を有する者
→公共事業の実施をしようとしている者
②管理不全土地建物の管理について利害関係を有する者
→管理不全土地建物の近隣に居住しており、土地建物の管理不全により被害を受けている者
上記の申立てを受けて、①調査を尽くしても所有者またはその所在を知ることができない場合または、②管理除去等に照らし、管理人による管理の必要性があると認められる場合には、以下に述べるように、財産管理人が選任されることとなります。
財産管理人に選任される者について
財産管理人は、裁判所によって選任されます。
管理人になるにあたって、特別な資格は必要ありませんが、弁護士や司法書士が選任されるケースが多いようです。
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土地の所有者が分からなくてお困りの方、土地の管理不全にお困りの方に対しては、財産管理制度の利用を念頭においたアドバイスをすることも可能ですので、お気軽に一度ご相談いただければと存じます。