不動産登記制度の見直し(相続登記の義務化を中心として)
令和4年1月28日、「民法等の一部を改正する法律」が制定されたことにより、相続登記の義務化が明文化されることとなりました。
ここにいう「相続登記」とは、正確には「相続を原因とする所有権移転登記」のことを指します。
なお、「民法等の一部を改正する法律」の施行日は、令和6年4月1日ですので、実際に義務が生じるのは同日以降です。
では、相続登記が義務化されたことにより、相続人にはどのような影響が生じることになるのでしょうか。
以下、登記制度の概要や趣旨と併せて解説していきたいと思います。
所有権移転登記とは
法律上、不動産の売買契約は、契約当事者間の合意のみによって成立し、不動産の所有権も当時者の合意のみで移転します。
もっとも、不動産の売買契約が当該当事者間において成立したこと、および契約成立に伴って不動産の所有権が移転したことは、契約とは無関係な第三者にとっては知る由もありません。
したがって、不動産の所有権を第三者に主張するためには、何らかの手段により、不動産の所有権が移転したことを明らかにする必要があります。
この際に用いられるのが、「所有権移転登記」です。
売買契約に基づき、土地の所有権を取得したケースを例にとると、買主は、自身への所有権移転登記を完了しなければ、所有権の取得を第三者に主張することができません(所有権を第三者に主張することを「対抗」といいます)。
民法においても、不動産に所有権移転については、所有権移転登記を具備しなければ、第三者に対して対抗することができない旨が規定されています(民法177条)。
相続登記義務化の目的について
今回の法改正において、相続登記の義務化がされた目的としては、「所有者不明土地」の解消が挙げられます。
上述のように、不動産の所有者を確認するためには、不動産登記を参照する必要があるところ、土地の所有者が死亡した場合において、土地所有者の相続人が所有権移転登記を完了していない場合、登記簿上の土地所有者は、既に死亡した被相続人のままになっているため、事実上土地の所有者が誰か分からないという事態が生じてしまいます。
相続の場面で、たとえ遺産分割協議が成立するまでの間であっても、相続持分に応じた所有権の移転という権利変動が生じており、所有権は被相続人から持分に応じた割合で相続人全員の手に移されているのです。この持分に応じた権利変動を登記しておくことを「相続登記」といいます。この持分毎の権利表示を行いなさいというのが、今回の改正のポイントとなります。
実際のところ、こうした相続登記がなされず、さらに遺産分割協議の結果に基づいた登記もなされずに、被相続人名義のまま不動産が利用され続けるという事態が多くあります。
そうすると、結局、世代交代が繰り返されるうちに誰が所有者なのか、所有者が一体何人いるのかが分からなくなってしまうのです。
このような土地は、「所有者不明土地」として、公共事業や復旧・復興作業の執行の妨げとなっているほか、長い間放置されることにより、管理不全の状態となり、周辺住民の生活に悪影響を及ぼすおそれがあります。
そして、近年増加傾向にある「所有者不明土地」を解消する観点から、この度、相続登記の義務が明文として規定されることとなりました。
相続登記申請を怠った場合の制裁について
これまでは、相続登記を怠ったとしても、第三者に対して土地の所有権を対抗することができないという不利益が生じるにとどまっていました。
しかし、改正法施行後は、正当な理由がないにもかかわらず、相続登記を怠ったものは、10万円以下の過料に処せられることとなります。
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